『読んでいない本について堂々と語る方法』
『読んでいない本について堂々と語る方法』ピエール・バイヤール著 大浦康介訳
筑摩書房(2008)
読書というものは、それをすることが社会的に全面的に肯定されているため、
「その本は読んでいない」とは言えないという圧力がある。しかし、本書によれば、かのヴァレリーやワイルドも、「読まなくていい本」があるということを指摘している。
そもそも本を「読んだ」とはどういう状態を指すのか。読書と言う行為には程度の濃淡がある。著者は未読を、①ぜんぜんよんだことのない本②ざっと読んだことがある本③人から聞いたことがある本④読んだことはあるが忘れてしまった本という4つに分類している。
いずれにせよ、大事なのは、本の渦にのみ込まれずに、それぞれの本を横断的に読み、それぞれを適切な文脈に位置づけ、最終的には、「自分自身」について知るための一助とすることである。
大学院生は、読むべき論文がたくさんあるが、もっとも大事なのは、それぞれをしっかり読むというよりかは、全体を見渡して、研究対象について知るための論文の「地図」を作ることだろう。